同質の声。
 
 
 
■ とある日本の写真家が、肖像写真を撮っていて、「気力は眼に出る」ということを、何処かに書いていた。
 それに答えたのか、ある小説家が「知性は声に出る」などと書いていて、そういうものか、と記憶に残った。
 見知らぬひとと電話で話していて、ああ、この人は自分と同じような感覚をしているのではないかと思うことがある。
 高かろうが低かろうが、そして時折ひび割れることがあっても、その背後にある漠然とした気配のようなものを感じることもある。
 
 
 
■ もともと、個性というのはじつに厄介な人間のさまざまな要素の複合体である。
人間が成長するにつれて、ある部分を抑制し、ある部分を育成することによって、微妙なバランスが生まれる。
 その前提として、自分を点検する作業があるのだが、となると、年齢によって、抑制する部分や育成しようとする部分が少しずつ異なってくることになる。
 人の声というのも、そうした微妙なバランスの上に成り立っているような気がする。
 もともとあったものに、何が付け加えられ何が削られたのか。そしてそれは、その人の裡でどのように均衡を保っているのか。
 見知らぬひとからの電話の後で、そのように思うこともある。